「思いを結ぶ七五三 」前編── 4人の対話から生まれた、一着の着物

 
 

七五三は、子どもたちの健やかな成長を祝う大切な節目。


2026年、クッポグラフィーが発表する新作着物 “はなむすび” は、それぞれ違う色や形をもつ花のように、異なる個性を育みながら成長していく子どもたちの姿に着想を得て生まれました。

企画、フォトグラファー、デザイナー、フローリスト。それぞれ異なる視点を持つ4人が、対話を重ねながら一着の着物をつくり上げていく。

その制作過程には、写真や家族との時間を見つめる、クッポグラフィーのものづくりの原点が映し出されていました。

今回は、新作着物 ”はなむすび” の制作過程をたどりながら、クッポグラフィーが大切にしているものづくりを紐解きます。


ひとつの思いを、みんなで育てる

 

2026年の新作着物 “はなむすび” は、クッポグラフィーとして初めて、社内のクリエイティブチームを中心に制作が進められました。


企画を担当した衣装チームの星は、そのきっかけをこう振り返ります。


「クッポグラフィーには、フォトグラファーやヘアメイクアップアーティストの他に、デザイナーやフォトアートディレクター、フローリストも在籍しています。社内のクリエイターが、それぞれの感性や得意なことを掛け合わせたら、もっと面白いものづくりができるんじゃないかと思ったんです。社内だからこそ、深く話し合いながら、お互いのアイデアをさらに良くしていける。そんなものづくりをずっとやってみたいと思っていました」

これまで外部クリエイターとのコラボレーションを重ねてきた経験を経て、今回は、社内のメンバーだからこそ生まれる表現に挑戦することに。

最初に共有されたのは、“はなむすび”というコンセプトと、子どもたちの成長に寄り添う世界観でした。

一人が描いたイメージに、誰かが新しい視点を加え、さらに別の誰かがかたちにしていく。4人が対話を重ねながら、一着の着物が少しずつ輪郭を帯びていきました。

 


花を束ねるように、その子らしさを思い描く

 

(写真)企画担当・星

 

“はなむすび” の制作で、4人が最初に思い描いたのは、七五三の主役である子どもたちと、その成長を見守ってきた家族です。

着物も花束もそっと寄り添う存在でありたい。子どもたちの表情や仕草、ご家族のまなざしが引き立つような一着を目指し、ものづくりが始まりました。

企画担当の星は、制作の背景をこう振り返ります。

「お花をテーマにしていますが、お花そのものをモチーフにするのではなく、花を束ねることや、植物が持つ可能性を表現したかったんです。」

そのイメージをかたちにするうえで、大きなヒントになったのが、フローリスト・前田が日頃から大切にしている花との向き合い方でした。

 

(写真)フローリスト・前田 花を束ねる前にお客さまのイメージを絵として描くことも

 

個人での活動も行う前田がいつも花束をつくるときは、

「どんなご夫婦ですか」「どんなお母さんですか」

そんな会話を重ねながら、その人が歩んできた時間や、大切にしているものに耳を傾けていきます。


「好きな花や色を聞くことは、ほとんどないんです。その方の雰囲気や季節の空気、温度感みたいなものを大切にしています」


自然の中を歩き、風の音や落ち葉、水の流れに耳を澄ます。 

そんな営みも、花を束ねるための大切な時間です。 

目の前の植物だけでなく、その周りに流れる空気や時間まで受け取りながら、一つひとつの花を選んでいきます。 

その姿勢は、フォトグラファーが写真を撮るときのまなざしとも、どこか重なります。 


子どもたちに決まった表情や仕草を求めることよりも、その子らしい瞬間が自然と生まれる時間を大切にすること。 


花と向き合う姿勢も、子どもたちを見つめるまなざしも、ありのままに受け止めることから始まります。無理に飾ることなく、それぞれが持つ個性や美しさに寄り添い、その瞬間だからこそ生まれる表情や空気を大切にする。 

“はなむすび”の制作は、ここから始まりました。 

偶然を重ねて、かたちになる

完成形を先に決めないことも、“はなむすび” の大切なプロセスでした。

デザインを担当した青柳は、普段の制作をこう振り返ります。

(写真)デザイナー・青柳

「私は最初にコンセプトを考えて、細部まで組み立ててからデザインを進めるタイプなんです」


しかし、いざ制作が始まると、フローリストの前田から、「もっとハプニングを楽しもう」という提案がありました。


その場で感じたことや、偶然生まれた発見も、そのまま受け止めながらかたちにしていく。完成形が見えないまま進んでいくものづくりは、青柳にとって新しい挑戦でした。


撮影当日には、みんなでスタジオの周りを歩き、枝やイチョウの葉を拾いながら、新しい表現を探していきました。

「この枝、面白いね」

「もう少し動かして撮ってみよう」

(写真左)フォトアートディレクター・久井

何気ない会話から生まれたアイデアが、少しずつ着物の柄やディテールへと結実します。

以前はヘアメイクとして撮影に立ち会ってきた星は、親子がお揃いの襟元に気づいて笑顔になるような、さりげない瞬間もまた、大切な思い出のひとつだと言います。

「こちらから説明するわけではないんですけど、『こういうのが好き』って気づいてくださる瞬間が、本当に嬉しいんです」

そうした何気ない気づきが、ものづくりのディテールへのこだわりにつながっています。

(写真)新作着物の襟元のチェック柄は、拾った枝で作ったデザインを使用


その場で見つけたものに夢中になりながら、自分だけの発見を楽しんでいく。そんな子どもたちの感覚も、このものづくりには自然と溶け込んでいました。

“はなむすび”には、3歳・5歳・7歳、それぞれの成長に寄り添うテーマが込められています。

星が制作メンバーに届けたのは、具体的な植物や色ではなく、その年齢だからこそ見せてくれる子どもたちの姿と、そこに重ねたい家族の願いでした。

wakaba(3歳)

日々の小さな成長を積み重ねて、一歩ずつ、一つずつ、新しい世界を広げていく。
「その眩しい達成感が、確かな自信へと結ばれていくように」と願いを込めて。


hinata(3歳)

はじめて見せてくれる、自分らしい色と形。その愛らしい芽吹きを、穏やかで朗らかな光が包み込む。
「日だまりのような温かさで、これから歩む道が優しさで満たされるように」という願いを込めて。



ibuki(5歳)

大人には真似できない自由な視点で、世界の面白さを次々と見つけていく。
「そんな自由で力強い創造力が、未来を切り拓く力になりますように」という願いを込めて。



iroha(7歳)

喜びや戸惑い、誇らしさ。たくさんの感情が揺れ動く7歳の心。それも全て大切な成長の証。
「感じるすべての感情が、豊かな人生の彩りとして結ばれますように」という願いを込めて。

“はなむすび”に込められた思いは、一着の着物だけにとどまりません。

後編では、“はなむすび”の制作に携わった4名のクリエイターが、それぞれの仕事を通して大切にしていることを語ります。

後編はこちら

インタビュー日:2026年6月

取材・文 鈴木美穂

 
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「思いを結ぶ七五三 」後編── 家族の時間を未来へつなぐ、それぞれの仕事

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