interview #1 - Masato Kubo

「一生飾っておきたくなるような写真」を目指し、どんな時でもベストを尽くす

自身が主宰するフォトグラファー向けのワークショップにて

自身が主宰するフォトグラファー向けのワークショップにて

Masato Kubo

 1982年生まれ、神戸市出身。早稲田大学在学中にアジア・アフリカ・中東地域を訪れ、フリーのフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。2009年3月、こだわりの結婚式写真を残したいという新郎新婦の希望に応えるべく、kuppographyを立ち上げる。現在では、フォトグラファーとして撮影をしながら、家族向けのフォトスタジオ・クッポグラフィー横浜港北店のオーナーも務めている。

【HISTORY】海外でのドキュメンタリー撮影から、キャリアをスタート

大学時代にスタートさせたフォトジャーナリストとしてのキャリアで、パレスチナ、ザンビア、ジンバブエ、インドネシア、東ティモールなどを取材。AERA、月刊PLAYBOY、中央公論など、国内外の雑誌に写真と文章を発表した。

大学時代にスタートさせたフォトジャーナリストとしてのキャリアで、パレスチナ、ザンビア、ジンバブエ、インドネシア、東ティモールなどを取材。AERA、月刊PLAYBOY、中央公論など、国内外の雑誌に写真と文章を発表した。

 僕が最初にフォトグラファーになろうと思ったのは大学2年生の秋。フォトジャーナリストとしてパレスチナ問題を取材している広河隆一さんの本を読んで衝撃を受け、「僕もこんな仕事がしたい!」と思ったのがきっかけでした。本を読んだ翌日にはヨドバシカメラでカメラを購入、春休みにはパレスチナに飛んで自ら取材を行いました。そうやって撮影した写真や記事を出版社に売り込んでいき、在学中からプロフォトグラファーとして活動をスタート。卒業後はインドネシアを中心としたドキュメンタリー撮影に取り組み、当時日本では知られていなかったさまざまな現地の社会問題を紹介し続け、その中には写真賞をいただいた作品もあります。そんな僕の写真人生の転機は25歳のとき。結婚を機に家庭を大切にするために国内で仕事をしたいと思うようになったのです。商品撮影、飲食店の撮影、求人広告の撮影などさまざまな仕事を経験する中で、特に「好きだな」と直感的に感じたのが、ウェディング撮影でした。

 

【POLICY】「新郎新婦も気づいていない風景」をも切り取り、世界で一つだけのドキュメンタリー作品を生み出す

挙式中の一コマ。新郎のお母さんが新郎への手紙を読んでいると、その過去の思い出話を聞いた新郎のお父さんがひっそりと涙を流していた。

挙式中の一コマ。新郎のお母さんが新郎への手紙を読んでいると、その過去の思い出話を聞いた新郎のお父さんがひっそりと涙を流していた。

"Pass the baton"というコンセプトの結婚式では、両親や祖父母から受け継いだジュエリーを、参列者用の冊子の中で見つけた"Pass the Jewelry"というページ上に配し、二人だけのオリジナルな一枚を演出した。

"Pass the baton"というコンセプトの結婚式では、両親や祖父母から受け継いだジュエリーを、参列者用の冊子の中で見つけた"Pass the Jewelry"というページ上に配し、二人だけのオリジナルな一枚を演出した。

 僕のバックボーンはドキュメンタリー撮影ですが、実は結婚式も本質的には「ドキュメンタリー」だと考えています。ただ被写体が外国の人々から新郎新婦になっただけのことで、「その瞬間にしかないリアルな光景を切り取り、見る人の心を動かす」という点は全く変わりません。僕が特に気をつけているのは、お二人を美しく撮るのはもちろん、お二人が気づいていない風景にも目を向けること。挙式の当日、新郎新婦は忙しいのでなかなか会場全体をよく見ることはできません。たとえば、ケーキ入刀をしているとき、お二人の目にはスマホを構えた友人や同僚しか見えないもの。でも実は、その奥から見つめるお母さんの目に涙が浮かんでいるかもしれない。あるいは、新婦さんの背後でベールダウンをするご両親の温かいまなざし。バージンロードで娘の手を離すとき、涙をこらえているお父さんの顔。――そういったご家族の写真をご覧になり、「父のこんな表情、初めて見ました」と喜んでくださる新郎新婦も多くいらっしゃいます。これは、ドキュメンタリー出身のフォトグラファーならではの目線かもしれません。

 

【LIFE STYLE】休日はほぼ100%、家族と過ごしています

自身の運営するフォトスタジオ・クッポグラフィー横浜港北店で自分の家族写真を撮った時の一枚。

自身の運営するフォトスタジオ・クッポグラフィー横浜港北店で自分の家族写真を撮った時の一枚。

出来上がったばかりのウッドデッキで、スタジオメンバーとともに。

出来上がったばかりのウッドデッキで、スタジオメンバーとともに。

 2016年1月現在、我が家は妻と4歳の娘、1歳の娘という4人家族です。フォトグラファーというのは休みが不定期になりがちなのですが、なるべく週に2日は休みをとるようにし、休日はほぼ100%家族と過ごしています。若いころ、僕は「自分の人生にとって写真の仕事以上に重要なものはあり得ない」と思っていたのですが、「子供と過ごす時間とはこんな素敵なものだったのか!」とすっかり考えが変わりました。これは全く予想外のことでしたね。休日は家族を連れてショッピングモールをぶらぶらすることが多いのですが、小型のミラーレスカメラは常に持ち歩き、妻や子供を撮るのが何よりの楽しみ。充実した休日を過ごすことで、仕事にもいい影響が生まれていると思います。ちなみに、仕事面で最近ハマっているのは「クッポグラフィーのフォトグラファーをプロデュースすること」。うれしいことに最近、すごくいい写真を撮る若手が集まってきているので、彼らの魅力を引き出し、お客様に知っていただくため奮闘中です。

 

【MESSAGE】「一生飾っておきたくなるような写真」を目指し、どんなときも妥協せずベストを尽くす

結婚式の時にはママのお腹の中にいた子が七五三を迎え、その記念の撮影を依頼されて元新郎新婦と再会。

結婚式の時にはママのお腹の中にいた子が七五三を迎え、その記念の撮影を依頼されて元新郎新婦と再会。

撮影後に届いた新郎新婦からのお礼のお手紙と写真は、ウェディングフォトグラファーにとって何よりの励みに。

撮影後に届いた新郎新婦からのお礼のお手紙と写真は、ウェディングフォトグラファーにとって何よりの励みに。

「新郎新婦が型どおりのポーズで微笑んでいるツーショット写真。しばらくは部屋に飾っていたけど、恥ずかしくて今は押入れの中」ーーウェディングフォトというと、そういう「記録写真」のイメージがあるかもしれません。僕が撮りたいのはそうではなく、一生お部屋に飾っておきたくなるような写真。ロケーションを最大限に活かした構図やライティングを工夫して美しい作品に仕上げることはもちろん、「お二人の幸せな感情」や「大切な瞬間」を捉えることで、そのように一生飾りたくなる写真が生まれると考えています。たとえば僕の場合、仕事でどんなに疲れているときでも家族の写真を見ればもう一度頑張ろうと思える。そんな、「自分を励ます一枚」「幸せになれる一枚」を、お二人のためにも残したいですね。そのためには妥協は一切しません。現場で集中力を100%発揮できるようコンディションを整え、お二人と誠実に向き合う。うれしいことに、結婚式が終わった後にも新郎新婦との交流が続き、何年か経ってお子様の写真撮影などをご依頼いただくこともあります。そんな風に信頼していただけるよう、これからもベストを尽くしていきたいです。